じゃこびの町

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ブルーモーメント第一回公演 朗読「菖蒲畑で見る夢は」に行ってきた

卵焼きはお砂糖派です!

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6月17日、山王ヒルズホールにて行われたブルーモーメント第一回公演 朗読「菖蒲畑で見る夢は」を観に行ってきた。もっと早くに感想を書くつもりだったけど、あっちこっちして他のイベントの記事を書いていたら、もう日が経ってしまった。トホホ。


きっかけは5月のマチアソビ。二日目に行われた野外での和井みずきさんと山口立花子さんの朗読でブルーモーメントに惹かれてしまった。あと、その後のハイタッチ会でブロマイドだけ買っとけばいいものを、見栄張って特別先行チケットを買ってしまいあとに引けなくなってしまったのも大きな理由。


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当日17:00に山王ヒルズホールのある日本芸術専門学校に着。このとき既に30人くらいは並んでたかな。物販が開始され、とりあえず上演脚本だけ買っておいた。


17:30、ホールが開場したので中へ。座席表を見た感じだとお客さんは180人くらい。ステージにピアノが置いてあったから、劇中に和井みずきさんが演奏されるのか~~!!??!?!??!?と勘繰ってしまったが、そんなことはなかった。ピアノは小林千夏さんという方が弾かれたんですけど、全部場に合わせて即興で弾いていたというのだから凄い。


待ってる間に雨の音が流れてたんですが、いい感じに弱まったり強まったりして、聞いてて心地良かった。「菖蒲のお花たちがびっくりするから電源をきるように」とか「菖蒲畑の思い出は心に刻んで録音録画はしないように」とか作品の世界観に寄せた諸注意をしていたのも面白い。


そんなこんなで雨が止んで開演。





重かった。YoutubeのPV見た時点で結構シリアスな話が展開されてくんだろうな~とは思ってたが、その予想を遥かに超えるくらいしんどいお話だった。


とりあえず登場人物の3人とその演者さんについて書いていきます。



香乃(かの)  :和井みずき

PV香乃ver「菖蒲畑で見る夢は」

舞台女優を目指す20歳の女の子。両親の期待を裏切ることができず医学部に入るも、違和感を覚えて芝居の世界を目指す。主人公咲人と出会い、彼に惹かれていく。

この劇のヒロインポジの子で陽の者。底抜けに明るい(ように振る舞ってる)キャラで咲人にも僕にも眩しすぎた。けど、その内面では親のお人形でしかない自分の存在価値へ疑問が生まれ、自身がどこにいるのか分からなくなるなど結構危ういところもある。それでも屈することなくなりたい自分になるためひた向きに努力し続けるんだから偉いよね、という話。結局眩しい。

お芝居の世界になりたい自分を見つけ、咲人のそばに自分の居場所を見出だしたところで、その咲人に自分の世界を否定され壊れていく様は壮絶。あそこの和井みずきさんの演技すごかったマジで。どこか分かんないかもしれませんが「うれしかったんだぁ」の台詞が一番香乃で印象に残ってる。喜びも嘆きも郷愁も全ての感情が一緒くたになってたった一言につまってた。天晴れ。


この朗読観てて、「不条理な現実でもがく」「理不尽な世界にも光がある」みたいなよく和井みずきさんがトークとかTwitterとかで話してる言葉だったりテーマだったりみたいなものが沢山出てきて、和井みずきさんが香乃なのか、香乃が和井みずきさんなのか分からなくなってた。
まあ和井みずきさんがいたからこの「菖蒲畑で見る夢は」という世界は生まれたんでしょうが。

この和井みずきさんって声優さんすごいですよね。役者やって原案と脚色して演出もやってって本当にナニモンなんだ。作詞作曲、最近弾き語りもできるようになって以前はヒーローショーのお姉さんもやってたらしいし、その多才さには恐怖さえ覚えてしまいます(トホホ~




咲人(さくと)  演:橋詰知久

PV咲人ver「菖蒲畑で見る夢は」

画家志望の26歳。菖蒲の絵を描き続けてるがほとんど評価されない。香乃に絵を誉められたことをきっかけに彼女が気になるが、その姿に亡き幼馴染み 天音の面影を感じる。


この作品の主人公だが、ヒロイン香乃とは対照的な隠の者。中学校ではクラスメイトにいじめられてた。こういう「自分が世界で一番不幸な人間」だと思い込んでるような卑屈なキャラが僕は死ぬほど嫌いなんですが、こいつには流石に同情せざるを得なかった。姉のように慕ってた天音が自分の言葉のせいで飛び降り自殺っていうのがまずきつすぎるし、彼女の遺書も心抉るもので、僕が咲人だったら耐えられず後追い自殺しちゃいますよ多分。

彼女と彼女を死に追いやった自分の罪を忘れないように戒めとして菖蒲の絵を描き続ける姿勢、これ凄すぎませんか?見方を変えれば、過去にいつまでも囚われ未来と向き合うことができないカスのように映るかもしれません。が、十字架を背負って天音のために(単なる自己満かもですが)10年以上も菖蒲を描き続けるって中々できることじゃないですよ。普通罪の意識に押し潰されて死んじゃうと思うし、実は咲人も相当強い人間だと思う。お前も天晴れだ。

とはいえ自分の感情をコントロールできず、激情に駆られて大事な人を傷つけてしまう咲人はクソ野郎だと思います。こいつの罪はやはりでかい。
でも、誰かに甘えて人を傷つけ、逃げ場所を作ろうとするっていうのは人間誰しもあることだと思います。僕も心あたりが無限に出てくるので咲人だけを責めることはできません。そういう突発的な感情の昂りからみるみる歯車が狂っていってあんな悲劇に繋がるんだろうなぁ。トホホ。

天音が見ることができないため今まで使ってこなかった緑色を使うことで過去との訣別、天音という楔からの別れを表現してたのは綺麗だった。最後に描いた菖蒲畑の絵がパンフレットの表紙なのかな?とか想像してしまう。

咲人役の橋詰さんの演技、よかった。怒鳴ったり不貞腐れたり、負の感情をあらわにする演技がとても光っていたと思う。あと、めっちゃ手が震えていたのもよかった。演者さんが緊張しているのを見ると、自分と同じ人間なんだな~と分かって何か安心します……しませんか?
人前で演技をするのが初(?)とは思えないほど役に感情が乗っていたように思えました。また橋詰知久さんのお芝居を見てみたい。あとアフタートークで関西弁だったのがめっちゃ親近感わいた。




天音(あまね)  :山口立花子

PV天音ver2「菖蒲畑で見る夢は」

色覚異常の女の子。咲人の3つ上の幼馴染みで姉のように慕われている。詩の世界に憧れを抱く。


優しく面倒見のいい姉であり、世界に絶望して命を絶った少女であり、咲人を過去に縛り死の世界へ誘おうとした死神。
まあ天音の存在がこの物語を数段重いものにしてるのは間違いない。天音は過去に死んじゃった子なんやろな~と序盤から勘づいてはいたけど、まさか自殺だとは思わなかった。しかも主人公の言葉が引き金とか。色覚異常を理由に虐められてて自分も辛いはずなのに、それをおくびにも出さず咲人を気にかけ元気づけようとする姿は本当に健気で涙が出てしまいますよ。

劇中では語られてませんでしたが、多分親とそんな仲良くないんだろうなと思います。頼れる人間が、甘えられる人間が誰もいないから全部一人で抱え込んで、大好きな咲人の前では強いお姉さんを演じ続けてあげて。誰にも弱味を見せることも助けを求めることができないから人知れず壊れていき、最後の咲人の一言がとどめを刺してしまったんだろうなぁ。悲しい。

咲人が年上だったら、天音が頼りにできるくらい強い人間だったら彼女も自殺なんてしなかったんだろうなと思うとやっぱり咲人へのヘイトが溢れてきます……ムカムカ!まあ一番の元凶は天音を拒絶した世界なんだろうけど。この劇で度々でる「不条理な現実」というやつの一番の被害者が天音なんだと思います。

天音が飛び降り自殺をしたあとに出てくる怨嗟の綴られた手紙、この劇一番の演技だったと思う。天音の悲嘆、苦悩、絶望が伝わってきて気分が悪くなったし(誉めてます)、死にたいの気持ちが溢れそうになるほど悲しかった。あんなの聞かされたら恐らく死んじゃうと思います。

物語終盤で咲人の内面世界が生み出した幻想なのか、死後の世界から現れた亡霊なのか、絵の中に咲人が入り込んでしまったのか、なんなのかは分かりませんが、天音が再び登場します。
またしても大切な人を傷つけてしまい自分と現実に絶望した咲人の前に彼女は現れ、"こっち"の世界の素晴らしさと現実の醜さを説いて死の世界に咲人を引きづり込もうとします。悪い女です。この前のミリオンライブ!5thライブの時にも思いましたが山口立花子さんは悪女似合いますね。

結局咲人は香乃のいる現実を選ぶわけですが、結果的に過去との別れと未来への一歩を踏み出すために一役買ってあげてて、最後まで咲人の成長を促すお姉ちゃんポジションでした。

自分ができなかった現実に希望を見出だすことを咲人に託して天音は消えちゃうんですが、咲人と香乃と天音の3人で揃って笑っていられる世界を見れないことが悲しくて、この場面ではポロポロと隣のおじさんと一緒に涙を流しちゃいました。





香乃も咲人も天音も三人全員が「お芝居」、「絵」、「詩」という現実とは違う、自分が本当にいたい世界をそれぞれ持っているというのが面白かった。人間、現実を見つめているだけじゃ間違いなく窒息してしまうので、なりたい自分でいられる別の世界を拠り所とすることも大事だと思います。現実に絶望しているこの3人には特に。

で、この3人のなかでも香乃と咲人は自分で「お芝居」と「絵」の世界を女優・画家としてつくり出すことができるけど、天音は他の誰かがつくった「詩」の世界に入り込むことしかできないというのが大きな違いだと思った。
香乃と咲人は自分の世界を人と共有することができ、その生み出した世界(芝居や絵)を誉めてもらう認めてもらうことで、理想の世界を通じてこの現実にも自分の居場所を見出だすことが可能だったんだろうなと。天音はこれができなかったから、二人以上に現実と現実の人々と交わることができなかったんじゃないかなとか思ったりもします。




何だかんだこの物語の登場人物たちは本当に強い、というか立派だと思います。残酷な世界に拒絶されても食らいついて立ち向かおうとしたのだから。

そこ行くと僕って本当になんなんだろうなという感じですよ。死ぬほどの絶望もなければ、生きるための希望を見出だすわけでもなく、漫然と毎日を過ごして命を消費して。ただ動いてるだけの死体なんじゃないかと最近は思えてきました。

劇中咲人が狂っているのは世界か自分か、みたいなことを言ってましたが、僕の場合は間違いなく自分がダメなんだろうなと思います。彼らのように現実から拒絶されたわけでもないのに怠惰な日常に甘え、何も耐えず何も頑張ってこなかったゴミクズみたいなものなので。なんか自分で書いてて涙が出てきたな。つら。
こういう理不尽に立ち向かう登場人物たちを見てると自分の惨めさが際立ってしまうので、物語に触れるのは結構毒なんですよ、毒。

とはいうものの、こういう劇であったり漫画であったりアニメであったりのキャラクターの生きざまに心震わされて楽しみを覚えたりしているので、どうしても離れられないのですが。というか依存してしまくってるんですよね。
前の「現実に押し潰されないように別の世界へ」という話に戻ってしまうのですが、僕は別の世界、幻想の世界に入り浸って現実に背を向け続けてるからダメなんだろうなぁ。それじゃあ本当に生きてるとは言えないですし、その先に待っているのは間違いなく死の国です。


まあさっきは自分が惨めになって毒だのなんだの言ってしまいましたが、本来物語とは明日へ踏み出す力を与えてくれるものだと思ってます。この「菖蒲畑で見る夢は」にしたってそうです。香乃の姿に元気を貰いました。咲人の姿に勇気を貰いました。天音の姿に優しさを貰いました。


アフタートーク和井みずきさんが「この公演が終わっても物語をそばに感じるように」みたいなことを言ってグッズの宣伝をしていらして、粋なことを言いなさると思いました(このあとパンフとCD買いに行った)。が、もう既に彼らの生きざまは観客の心に根付いてこれからの現実に彩りを与えてくれるので、形あるものを持ってなくてもいつまでも一緒だと思っています。ちょっと大袈裟に言ったかもしれませんが、少なくとも僕の心にはそれぐらい響きました。


この登場人物たちは少し僕には眩しすぎて、醜い自分が照らし出されて自己嫌悪に陥ったりもしましたが、ブルーモーメントは人間の弱さと強さを見事に描いた素晴らしい公演を見せてくれました。今年に入ってそこそこ声優さんとかの朗読劇を見ましたが、ダントツで今回のが一番です。100点。これからもこういうシリアス路線のお話を観劇したいなぁ。


まああれですね、僕も勇気を出して少しずつ現実に向き合っていこうかな~と思います。という感じで強引ですが締めたいと思います。



結局今回もとっ散らかった文章になってしまいましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。







(完全に余談なんですけど、僕大阪北部に住んでいるのですがこの公演のために東京に滞在していたおかげで地震から逃れることができました。救われた、というと言い過ぎですが、何か縁を感じずにはいられませんなぁ…トホホ~)