じゃこびの町

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【8】君の膵臓を食べたい を観てきた【感想】

9月2日、劇場アニメ『君の膵臓を食べたい』を梅田ブルク7で観てきた。

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天晴れ。

元々そんな観る気はなかったが、舞台挨拶をブルクでやるという話を前日に聞いたのと、東京に行く前微妙に時間があったので、とりあえず行ってみることにした。勿論原作は未読。


ま~あ面白かった。こんな「あからさまなお涙頂戴映画」で泣くわけがなかろうがwwwとたかをくくっていたが、普通に号泣。見事な男泣きをしてしまった、トホホ。なんというか、自分はこの作品のターゲット層ではないなと勝手に思ってたが、全然そんなことはなかった。
あとで知ったけど、これ最初は電撃文庫に投稿しようとしたらしくて、その後なろうで連載、双葉社の目にとまってどうやら文庫本化したらしい。完全に僕みたいなキモオタ御用達の作品でわろた。それが260万部発行の大ヒット小説になったというのだから本当に見事としか言いようがない。


人と関わるのが嫌いなコミュ障の「僕」は、ある日病院で『共病文庫』という一冊の本を拾う。クラスの人気者 山内桜良が綴っていたその本には、彼女が膵臓の病気で余命わずかしかないことが語られていた。秘密を知ってしまった「僕」は桜良の「死ぬまでにやりたいこと」に付き合わされていくことになるが────みたいな話。


タイトルが余りにも強烈でそれに惹き付けられた部分もでかかったが、名前からは想像もつかない、そして名前に負けない素晴らしい物語だったと思う。「君の膵臓を食べたい」という題名の回収やその意味も二段構え、三段構えとなっていて凝ってんな~と感心した。広告でやたらと目にする「──読後、きっとこのタイトルに涙する。」とかいう大袈裟なコピーに嘘偽りはなかった。

主題歌を歌うsumikaさんの曲もこれまた素晴らしい。キャッチーながら見事に作品を歌った詩が織り込まれていると思うし、この作品を彼らも愛してるんだろうなというのが伝わってきた。
あと劇伴もグッド。優しくも切ない音色が今でも耳に残っている。残っているが主張が強いという訳ではなくて、キャラの台詞を引き立たせるような控えめなBGMだった。

「僕」
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まあ話の中盤くらいまでは「僕」がウザすぎてストレスがマッハだった。今日日ここまでコミュニケーションがとれない、とろうとしない人間中々おらんやろ。桜良が良い子だから余計にこのクズにムカついてきてしまうし、桜良の親友 恭子ちゃんの気持ちもよく分かる……イライラ!
高杉真宙さんの演技も素晴らしくて、人を拒絶して空気の読めない「僕」の姿で客をイラつかせるのが目的だったら間違いなく大成功。
今回高杉さんは声優に初挑戦ということらしいが、時系列通り順撮りで収録されたことで、徐々に心を開いていく「僕」と高杉さんの声の演技の成長が物語に進むにつれて重なっていってよかったんじゃないでしょうか。
この高杉真宙って人アニメ、ゲーム、漫画が好きと公言していてファッションオタか!!!???とお灸を据えてやろうと思ったものだったが、3,4年前のブログの写真見たら完全に""ガチ""でひっくり返った。お見それしました。


山内桜良

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「僕」が根暗過ぎるため、ヒロインの桜良の明るく元気に振る舞う姿が余計に映えた。まぶしい~。クラスに一人いるよなって感じの天真爛漫なムードメーカーな女の子。思いやりもあって人を気遣うこともできて、なんでこんな良い子が死ななきゃならんのだと序盤からツライツライになってた。本当に健気な子で、長生きしてほしすぎるから作品世界に入って桜良ちゃんを助けるまであるなと最近考え込んでしまう。
表情や仕草の一つ一つが丁寧に描かれてて、スタッフさんたちがこの「山内桜良」というキャラクターを観客に愛してもらうため心血注いだであろうことが伝わってきた。
この17歳という年齢でここまでしっかり自分の世界観、というか自身の哲学を持ってるのマジで凄いと思うしどんな人生送ってきたんだよと思わずにはいられない。


この二人のラブロマンスが展開される恋愛映画なのかと思ったら全然そんな話ではなくて。恋愛だとか友情だとかそんな生易しい関係ではない、なんというか秘密を共有した共犯者というか……違うか。とにかくこの二人のなんとも言えない関係と距離感が胸をキュンキュン締め付けてきてやばかった。

切ない話だけど見終わったあとはどこか晴れやかになる、そして明日からの一日一日を噛み締めて生きて行こうと思わせる映画だったな~と思う。

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入場者特典。住野よる先生書き下ろし本編の後日談が描かれていて、結構ボリュームある。いつなくなるとも知れないので皆さん劇場に急ぎましょう。


とりあえず、『星の王子さま』と原作読んでからもう一回僕も劇場に行きたい。

星の王子さま (新潮文庫)

星の王子さま (新潮文庫)













以下重大なネタバレ














youtu.be

最初の方で通り魔のニュースが流れた時点でもう刺されて死ぬ展開だろうなというのは秒で読めた。ただ、それがいつなのかが全然わからなくて「ここか、ここなんか!?」と終始ビクビク。刺されるなら絶対一人のときだろうなと思ってたから、桜良を一人にさせるな!おい!とずっと心で叫んでた。

膵臓の病気で死なんのかーい!と肩透かしをくらいそうだったが、桜良が言っていた「人はいつか必ず死ぬ」「いつ死ぬか誰にも分からない」みたいな台詞とも合致するからいいんじゃないかと思った。そういう予期せぬ事態にも備えて最後の遺書を書いていたんだろうし。


桜良の「友人に自分の病気を知られたくない」という気持ちには本当に共感した。というのも、僕2年前に脳腫瘍と脳動脈瘤が見つかっていて。
当時は「やば~」とあたふたしたものの、家族や頻繁に会う人間なんかには絶対言わないように心がけていた。桜良じゃないけど。何故かと言ったら、同情されたり心配をかけさせたりしたくないから。絶対相手は反応に困ることが分かりきってるから。そして何より、話すことでそれまでの関係が全部崩れてしまうんじゃないかと怖くなってしまうというのが一番の理由だと思う。

それでもやっぱり誰かにこの秘密を打ち明けないと恐怖に押し潰されそうになってしまうので、こうやってブログに書いたり、普段余り関わらない旧友なんかにはヘラヘラと話してしまう。
だから、桜良は「僕」が共病文庫を読んでくれたとき、秘密を共有できる相手が見つかってとても嬉しかったんだろうな~というのが僕は痛いほどよく分かった。なんかもう他人事じゃないし、こういう理由もあって桜良に感情移入して好きになっちゃう大きな要因になってんだなと感じる。
来るな~と分かってはいたものの「山内桜良 死亡」の文字が流れてきたところは悲しくて悲しくてどうにかなりそうだった。



まあでもなんやかんや言ってもこの物語の主人公は「僕」こと志賀春樹。こんだけ勿体ぶってしょうもない名前だったらぶん殴ろうかと思ったが、ハードルを悠々越えてくれる真名が出てきて唸るしかなかった。
上の方で散々春樹君を貶していたが、中盤から終盤、彼がどんどん成長して心を開いていく姿を見ていてパパの顔つきになってしまった。共病文庫を読んでこいつが泣いてしまうシーンでは僕も我慢できずオンオンと号泣。辛いやろなぁ、おれも辛い。

最後のページが「君の膵臓を食べたい」で締め括られていて、物語冒頭で最後に送ったメールとリンクするのがもう素晴らしいし、あれほど「正反対」と言っていた二人が全く同じことを考えてしまう程に変わった、お互い近付いたということの証明になっていてもう嬉しすぎる。あっぱれ。

オープニングが桜良の「君の膵臓をたべたい!」から始まって、エンディングは春樹の「友だちになってほしいんだ!」で流れ始めるのも良い。主題歌「春夏秋冬」の歌詞も「桜」から始まり、「春」で終わるっていうこの二人の対比ね。ま~あ憎い。
「そろそろ行かなきゃ 僕の番」って歌ってるように、桜良から春樹にバトンが渡されて新しい人生が、物語がこれからまた紡がれていくんだろうな。



[追記]
原作を読んで何回かまた映画をみたが、大分上手く取捨選択して映像化したな~と思う。花火のシーンとかのオリジナル要素交えて病院での会話を展開させてたのも、華のある画で分かりやすい形で山場を作れていて良かったと思う。

あと、最後の遺書の部分で『星の王子さま』をモチーフにした風景の中で桜良に語らせてたのがあっぱれだった。この前『星の王子さま』を読んで思ったが、山内桜良は大分この作品の影響を受けて形成されたキャラクターだと思う。監督が「桜良の哲学は『星の王子さま』の哲学だと考えた」と言っていたのも納得。
この紙の上でひたすら続く独白部分をどう絵にするか、映画にするか悩んだであろうことが伺えるが、マジであれは最高のアンサーだったと思う。




何度も言うが本当に素晴らしい映画だった。『君の膵臓を食べたい』を観るということを「選んだ」のは間違いじゃなかったなぁ。トホホ。

原作と『星の王子さま』を読んでこの作品を咀嚼してからもう一回映画館に行きたい。彼ら彼女らにまた会いに行きたいな~と思う。