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【感想】二十年ぶりに黒澤明の『羅生門』を観たけど凄すぎて崖から転げ落ちた

6月15日、幼稚園ぶりに世界の黒澤明監督の『羅生門』を観てみました。

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面白過ぎてワロタ。

当時はストーリーとか何もかも理解できていませんでしたが、大人になった今観るとこの映画の凄さがマジでよく分かります。


まずストーリー構成が神。

これは芥川龍之介の原作『藪の中』でもある""複数人の語り部によって明らかになっていく事件の全貌""、""それぞれの視点によって食い違う証言""の二点によるところが大きいです。
加えて映画『羅生門』では、杣売り*1が下人と旅法師に対し『藪の中』を羅生門の下で語るという内容になっていて、「羅生門で雨宿りする三人の男たち」「検非違使の前で証言する当事者たち」「語られる事件現場」の3つの時間軸が行ったり来たりすることで物語の構成を更に複雑にしてます。*2複雑にしてますとか言いましたが、原作同様コンパクトに話は纏まっており、頭には入ってきやすいです。多分。

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滅茶苦茶どうでもいいですがバキとかでよくある「事件当時を目撃者がインタビュー形式で語る」やつ、『羅生門』から着想を得てるんだなと思いました。

影技法とかカメラワークも70年前のものとは思えないような、現代でも通じるものばかりでひっくり返ってしまいました。数えきれない多くのクリエイターが黒澤明の影響を受けて作品を世に出してきたのだからまあ当然なんですが。
太陽にカメラを向けるっていうのもこれが初めてだったみたいですね。有名な話だと墨汁を混ぜた雨をホースで降らせたとかなんとか。

どしゃ降りの中に聳え立つ原寸大羅生門のセットも圧巻でしたが、延暦17年と書かれた瓦を4000枚焼いたというのが真剣(マジ)過ぎて笑えてくる。あっぱれ。

あと殺陣のシーン。
手は震え、地べたを転げ、敵に背を向け逃げ回り、とても殺陣と言っていいのか分からない泥臭い立ち合いでした。多襄丸と金沢のみっともなさや場馴れしてない感じが出ていて良かったと思います。

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今なお『藪の中』の真相はタイトル通り藪の中になってるワケですが、この映画では最後に杣売りが語る証言が一応の真実であり、当事者三人の口から語られたことは虚言であるということで決着が着きました。

虚栄心、羞恥心、恐怖心。自分を守るため、自分をよく見せるために、人間は手前勝手に都合がいいように嘘を吐きます。
人を疑わずにいられない世の中に絶望しながらも、赤子を引き取ろうとする杣売りの優しさにまだこの世も捨てたものではないと希望を見出だす坊さん。
実際に杣売りが赤子を育てるのか否か、羅生門をバックに意味深に映画は終わります。

劇中、人の残酷さは羅生門の鬼ですら逃げ出すほどと語られるように、人間はどこまでも邪悪になれます。これは事実ではありますが、同様に、人間は他者を思いやり、優しくなれる心を備えているというのもまた事実です。

何が真で、何が偽か。それすらも分からない世の中ではありますが、人の心にある温かな場所をぼくも信じていきたいです。


最後に
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

*1:『藪の中』の樵

*2:いわゆる扇状回想法とかいうやつ