じゃこびの町

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【感想】映画『天気の子』を観たけど感情が爆発して四肢が吹き飛んでどっか行った【ネタバレ注意】

会社定時に上がってこの前『天気の子』を観てきました。

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天晴れ。

ブログ開設してから優に数百はこの脳死ワードを乱発してきましたが、「天晴れ」という言葉がこれほど似合う作品もなかったと思います。あっぱれ。

天気の子』を鑑賞する前に新海誠の作品は全て履修するように、というオタクたちの圧に負けたので、とりあえず『ほしのこえ』から『君の名は。』まで視聴してからの対戦。万全の準備をしたつもりでしたが、普通にボコボコにされました。

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まあ『天気の子』が一番好きです。一番感情を揺さぶられました。*1

あらすじ
高1の夏、帆高は離島*2から飛び出し、雨の降り止まない東京にやってきた。ライター須賀圭介が営む小さな編集プロダクションで働くことになった帆高は、女子大生夏美と共にオカルト雑誌の取材に奔走する毎日を送ることに。そんな中、空を晴れに出来る力を持った少女陽菜に出会い─────。


映画『天気の子』予報①

どこまでもリアルな東京の街並み

新宿が新宿そのままで、ちょっと感動しました。

怪しげに光る歌舞伎町一番街のアーチ、やかましくも耳に残る謎の歌を永遠流してるバニラのアドトラック、我らがまんが喫茶マンボー新宿靖国通り*3。挙げれば切りがないほどに、何度も目にしたことがある風景が劇場で映し出されます。

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出典 : YouTube

ものだけでなく、しつこいキャッチや子ども相手にピリピリする余裕のない大人たちなんかも""ぽい""な~と思いました。天候を利用した美しい街並みも目を惹きますが、新宿という街の冷たい部分、猥雑な部分が雨の中で剥き出されていくのも印象的。

見慣れた景色がそのままスクリーンに流れていると、自分もキャラクターと同じ世界に住んでいるんじゃないかと、若しくは、帆高も陽菜もこの現実のどこかにいるんじゃないかという気がしてきます。気がするだけですが。

ファンタジーの色が強い作品になっていますが、どこまでもリアルな東京の風景が下地にあるため、現実と非現実が上手い具合に共生していて好みの世界観だったかなと思います。新宿行きたくなりました。


余談ですが、冒頭と終盤で帆高がさるびあ丸に乗って神津島から東京へ向かっていてひっくり返りました。
ここ数ヶ月伊豆諸島へ謎にフェリーで行き来していたのが、思いがけないところで活きたといったところ。完全に伏線回収だろ、これは。

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圧倒的な映像美と絶対的な神劇中歌


映画『天気の子』予報②

予告の時点で分かりきっていたことですが*4、天候を駆使した背景美術がただただ綺麗。心打たれました。

「天候の調和が狂っていく時代」を舞台としているだけあって、スクリーン内は連日雨雨雨。パッとしないねずみ色の世界で、大地に叩きつけられ弾ける雨粒や、広がる波紋の一つ一つが生きているような躍動感をもって丁寧に描かれていて、『言の葉の庭』同様に""雨""という映像表現に対する並々ならぬこだわりを感じます。

そんな灰色の世界が陽菜の祈りによって金色に輝き出すシーン、まあこれが映える。
写実的に描かれた薄暗い新宿の街が、色鮮やかに塗り替えられていくんですが、その変化が観ていて本当に気持ちがいい。最早人界で見られるような景色ではないし、完全に神域のそれ。

帆高が「人の心は天気と繋がっている」と劇中言っていましたが、正にその通りで。どこまでも広がる青空と目映い光に照らされた街を見るだけで、人の心はこんなにも踊るものなのだということを、確かな説得力を持って映像で教えてくれました。

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出典 : YouTube


都庁通りから見えるビル群のガラスの1枚1枚が、""祝祭""のサビに合わせてオセロみたいに白黒ひっくり返ってくシーンがあるんですが、マジで楽しい。
これなんかでも見たことあると思ってたらあれですね。第3新東京市
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出典 : YouTube


陽の光で言えば、神宮外苑花火大会を晴れにするために、六本木ヒルズのスカイデッキから祈りを捧げる場面。あれもガチで凄かった。
雨雲が開けて黄昏が顔を覗かせるんですが、劇伴も相まって神々しさすら感じるシーンだったと思います。あっぱれ。

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出典 : YouTube


画が凄いのは勿論なんですけど、今回も劇伴音楽、劇中歌が観客のバイブスを上げまくってくれました。
君の名は。』同様RADWIMPSが音楽全般を担当していますが、冷静に考えるまでもなく、一つの映画のためだけにバンドマンが30以上の楽曲を作成・提供するという事態、余りに異常。劇中歌全ての作詞も担当しているし、野田洋次郎、マジでナニモンすぎる。


『グランドエスケープ』とかいうmasterpiece。これがクライマックスで流れたときの盛り上がりがやばい。

帆高が風を切り裂きながらフリーフォールし、空の上の世界から陽菜を連れ出すモーニング・グローリー(あるいはバレエ・メカニック)*5みたいなシーンがあるんですが、本当に熱い。
歌い出し、サビのタイミングと映像、帆高の叫びと歌詞が怖いくらいに噛み合っていて、なんかパニックになってしまった。

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出典 : YouTube


既に複数回『天気の子』を鑑賞して、イントロが始まる度に「来るぞ来るぞ来るぞ…」と身構えはするんですが、どうしてもサビで鳥肌を抑えることができない。溢るる涙を止められない。
僕みたいに感情と感覚で映画を観てる人間は、この3分8秒間の奇跡を目の当たりにしたら確実に幸せになれます。皆でグランドエスケープになりましょう。

大丈夫

大丈夫

あと『大丈夫』もすごい良かった。というかこれも「歌に合わせて映像を作った」という感じの場面でした。

でも、ここで一つ告白しておかなければならない。実は僕は『大丈夫』を最初に聴いた時、これは曲としてはこの映画には使えないと思い、そう洋次郎さんにお伝えしたのだ。
(中略)
しかし実にそれから一年後、僕は最初にもらったこの曲に助けられることになる。ラストシーンの演出に悩んでいたのだ。
(中略)
ふとまだ使われていないままだった『大丈夫』のことが話題に上ったのだ。そしてあらためてこの曲を聴いてみて、僕は衝撃を受けた。
ぜんぶここに書いてあるじゃないか。
そう。必要なことも、大切な感情も、すべてが最初にもらった『大丈夫』に歌われていたのだ。僕はほとんど歌詞から引き写すようにしてラストシーンのコンテを描き、一年前に届いていた曲をそこにあてた。果たしてそうしてみれば、それ以外は他に在りようもない、それがこの物語のラストシーンだった。

小説 天気の子 (角川文庫)

小説 天気の子 (角川文庫)

  • 作者:新海 誠
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/07/18
  • メディア: 文庫

『天気の子』は監督主導ではなく、スタッフ一人一人が個性を遺憾なく発揮して「これは自分が作った映画なんだ」と思えるような作品になっているということが語られていましたが*6、その中でも野田洋次郎は特に映画の根幹に関わっている人間なんだなというのを小説のあとがきを読んで思いました。

出来上がった脚本を一番最初に野田洋次郎に送って読んでもらい、その感想を曲にして新海誠に返したりとこの二人の信頼関係はガチで強いんだろうなと思います。

中流れる楽曲や歌詞の一つ一つが、映像や物語にこうも見事に調和するのも納得です。


ボーイミーツガールとかいう浪漫
帆高という主人公がいるんですが、ま~あ凡。キャラデザも平凡。
取り立てての特徴のあるキャラクターでも、大した過去が描かれる人間でもないですが、そういう設定が固められてない主人公の方が観客は感情を重ねやすいので、よかったんじゃないかと思います。

今の自分や環境に漠然とした不満と焦燥感があり、いわゆる""ここじゃないどこか""に行きたい系主人公というのも、今作のメインターゲットであるとされている10~20代の若年層は共感できる部分があるんじゃないかと思いました。(まあ帆高に世界や社会に対しての苛立ちみたいなものを抱えさせたのは、『君の名は。』でボロクソに世間から叩かれたことも起因してるそうですが)*7

家出のお供にサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を持ってきちゃうのも思春期特有といった感じ。

反対にヒロインの陽菜はというと、天候操作、姉、家事上手、おさげ、親なし、人柱、自己犠牲、水商売…と無限に設定が盛り込まれていてトホホ。
JCヒロインに風俗やラブホ行かせようとする辺り、監督の変態的なフェティッシュが垣間見れます。

こういう何も持ってない少年が特殊な境遇の女の子に出会い惹かれていくっていうのは正にボーイ・ミーツ・ガールといった感じがします。

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出典 : YouTube


後半、お尋ね者になった帆高たちが夜の街をさ迷ったり、ラブホに逃げ込んだり、パトカー相手にバイクチェイスを繰り広げたりするんですが、良いですよねこういう非行。ちょっと憧れます。小さい頃の浪漫を、これでもかというくらい詰め込んだ展開の連続で普通に失神。

少年と少女だけが真実を、世界の秘密を知っているけど、大人はそれを信じない。何も知らない大人たちを敵に回してでも、誰かのため何かのため子どもたちが奔走する、というのはいつ見ても胸が熱くなりますし、応援したくなります。

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もう十分です。
もう大丈夫です。
僕たち、なんとかやっていけます。
だから、これ以上僕たちに何も足さず、僕たちから何も引かないでください。


特に単体で響くような台詞はあんまなかったんですが*8、ホテルでの帆高のこの言葉は印象的。

この一瞬が永遠に続いて欲しい、この瞬間のために生まれてきたんだ、という人生一番の幸せを感じる場面が誰しもどこかで在ると思いますが、帆高にとってこのシーンが正にそれで。こんな幸せな時間がいつまでも続くわけがないことを帆高も観客も予感できてしまっていること込みで、非常に尊(たっと)い時間が描かれていたと思います。
ラブホという大人たちのちょっと穢れた空間が、子どもたちにとっての聖域であり神域となるのも面白い。

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一生懸命真っ直ぐに人を好きになるっていうのは、やっぱり良いなぁって観てて思いました。僕には少し眩し過ぎましたが、『天気の子』はアムールの偉大さを改めて教えてくれる映画だということは間違いありません。


世界よりも少女を選ぶという選択

映画『天気の子』スペシャル予報

映画観る前にSNSで「天気の子は賛否両論な展開!」みたいなことをよく目にしたんですけど、観終わってもそれが一体どこのことだったのか分かりませんでした。読解力0なので。気になって調べてみたらあれですね、東京を海に沈めたラストのことを言ってたんですね。椅子から転げ落ちました。

いや、映画の中でくらい東京の一つや二つ海に沈めさせてやれよ。

主人公は絶対世界を救わなければならないみたいな圧力、よくないと思います。よくない。

劇中で須賀も言うように、少女一人の命と東京都どっちを選ぶべきかなんていうのは秤にかけるまでもなく常識的に分かります。分かりますが、そもそもフィクションの世界に現実世界の法であったり、常識であったりを我々観客が押しつけようとするのがナンセンス。映画は道徳の教科書じゃないんだぞと。

君の名は。』の公開時も「起きたはずの災害をなかったことにする許しがたい歴史修正主義作品!!」みたいな度を超えた道徳的観点から叩かれていたのを思い出します。

ただ、『天気の子』はこういった前作の批判を踏まえて「『君の名は。』でキレた人をもっとキレさせたい」という捻くれたコンセプトが作品の根底にあって今回の結末が描かれたことが各所で語られているので、新海誠の狙い通りなのかなと思います。まあ『君の名は。』で絶賛してた人も沢山キレさせる結果になった感じはしますが。


映画『天気の子』後報

この映画に明確な悪役というものは出てきませんが、帆高たち少年少女の行く手を阻む"敵"は何度も現れます。
それは何も知らない(知らないふりをしている)大人たちであり、最大多数の幸福のために誰かが人柱になることを良しとする社会であり、少女が犠牲にならなければ天気一つ良くならない狂った世界そのものでした。

こういう歪な社会のシステムによって少数派が抑圧される、排除されるっていう構図を前にしたら大抵の人はマイノリティである主人公に肩入れするもんだと思ってたんですが、意外にもそうではなかったみたいで。会社で『天気の子』の話になったとき、手放しで""天気よりも陽菜をとった帆高の選択""を称賛していたら、普通に袋叩きにあって泣いちゃいました。
以前Twitterで、女子高生が急病の乗客を助けるために電車の非常停止ボタンを押そうとしたら車内の大人たちにボロクソに責められたみたいな事件が話題になってたのを映画鑑賞後にふと思い出しましたが、この映画も通ずるものがあるなぁと思います。

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""大多数の利得の為に一部の人間が犠牲になる""というのは現実でも毎日のように起こっている事態であり、誰もが知っていながら知らないふりをしている日常ではあることは間違いありません。しかし、この犠牲になる""一部""に誰が入ってくるかによって、人は知らないふりができなくなるということもまた事実で。

結局、『天気の子』110分の上映時間の中で陽菜や帆高を好きになることができたか、愛情が湧いてきたかどうかによって、陽菜と東京を天秤にかけた時の結果は変わるんだろうなと思います。
そういう意味でも陽菜は本当に魅力的なヒロインに仕上がっていて、ガチで万人に愛されるキャラクターを創ってきたという気がします。多くの観客が「陽菜さんに死んでほしくない」という気持ちを主人公と共有できたのではなかろうかと、「青空よりも、俺は陽菜がいい!」と言い切る帆高に痺れることができたのではないかと、そう感じました。

これまで僕は過去の記事で散々「感情任せに行動して周りに迷惑をかけるタイプのクソガキキャラが嫌い」ということを書いてきたんですが、帆高や陽菜にはそういったことに対する不快感は一切ありませんでした。というのも、キャラクターに対して""愛があるから""という答えに帰結するんですが、この一言で全ての行動を全肯定できてしまうんでズルいですね。

どれだけ大人や社会を敵に回そうとも、愛を原動力に全てを振り切っていける。笑われるくらいの、恥ずかしいくらいの愛で世界を変えていく、奇跡を起こす。""愛にできることはまだある""のだと教えてくれる、『天気の子』は正にそんな少年少女の物語でした。

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エピローグで大人たちが「世界は元々狂っていた、だから東京が沈んだのも誰のせいでもない」と諭してきますが、ラストシーンで帆高が「違う!そうじゃない!」とこれを真っ向から否定してくれたのはあっぱれでした。森嶋帆高、あっぱれ。

確かに世界が元々狂っていたというのは事実ですし何も間違ってはいないです。その通りです。
ただ、お天気ビジネスを通して天気がどれだけ人の心を動かすのか、人を幸せにできるのかを誰よりも知っているはずの陽菜と帆高がそんなことをラストで語ったら、これまでの全てが嘘になってしまうやろと。

世界の形を決定的に変えて、大勢の幸せを奪うことになってしまう。それを理解してもなお、陽菜という一人の女の子を選んで生きていくというその選択こそが、何よりも尊く、この物語の叩かれるべき素晴らしい点なので、そこから目を背けることなく向き合ったのは絶賛したいです。

最後に画面に映し出されたタイトルロゴ。""Weathering With You""(あなたと共に乗り越えていく)という副題の通り、この二人は世界がどんなに変わろうとも生きていけるのだと、この二人なら『大丈夫』なのだと確信しました。*9

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おわりに
『天気の子』、大分メッセージ性の強い作品だと感じました。
劇中で語られるように世界は狂っていく一方で、異常気象だけでなく格差社会少子高齢化年金問題と僕たち若者の未来はまあ明るくないです。日本という沈みゆくタイタニックの中で僕たちに一体何ができるのか。できないのか。まだよく分かりませんが、とりあえずこの映画を見てもっと自分のために生きていきて~と思いましたし、転職を決意することができました。新海監督ありがとう。

メッセージだなんだとかいう話を抜きにしても、エンターテイメントとして『天気の子』は非常に優れていると思います。
美麗な映像に、胸が高鳴る楽曲の数々、中年受けの良い俳優陣の起用、前作キャラのカメオ出演、要所要所に盛り上がる場面も用意されていて、笑いあり涙ありでワクワクするしキュンキュンする。老若男女楽しめるように、詰め込められるものは全て詰め込まれたような作品になっていますので、自信を持って""面白い""と人に勧めれます。観たあとキャラクターに同調できるかどうかはまあまた別の話になってきますが。

絶対に映画館で観るべき映画であることは間違いないので、まだの方は映画館へ急ぎましょう。


最後に
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

おまけ
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*1:映画館という映画がフルパフォーマンスを発揮できる場で観れたのが天気の子と君の名は。だけなので、それ以外を比べるのはちょっとフェアじゃないですが

*2:神津島

*3:帆高は24時間パック3200円(小説版だとナイトパック12時間2000円)で漫画喫茶に泊まっていたが、新宿で同じ24時間ならカラNET24で1300円の12時間パック×2の2600円で帆高よりも600円安く滞在できる。

*4:おれは映画観る前に一切予告を見なかったから分からなかったが

*5:交響詩篇エウレカセブン』第26話、第48話

*6:キネマ旬報8月上旬号

*7:月刊カット8月号

*8:そもそも映画は言葉で魅せるものでもない

*9:インタビューで新海誠が「この二人は付き合っても上手く行くとは思えない」「恋人同士になれる気はしない」と答えていて憤死した