じゃこびの町

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【感想】栗本薫の『ぼくらの時代』読んだけど面白すぎてワロタ

2月5日、栗本薫さんの小説『ぼくらの時代』を読みました。

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あっっっっっぱれ。

1、2年前くらいから読もう読もうと思いつつも、長らく部屋の隅に放置していたこの本。ようやく今日読んだんですけどガチで面白い。久々に唸りました。


あらすじ
栗本薫。22歳、みずがめ座、私立大学の3年生。ロック・バンドの仲間である信とヤスヒコの三人でTV局の雑用バイトをしていたところ、人気アイドルあい光彦の公録中に殺人事件に出くわす。被害者はファンの女子高生。現場に居合わせたために容疑者にされた栗本たちは、疑いを晴らすため捜査に乗り出すが───


40年前のアイドルファンの描写がウケる
冒頭、入待ちでTV局に群がる熱心なファンの女性たちの様子がこと細かに説明されるんですが、「バカ女、豚娘、気狂い」と大人たちからボロカスに言われて笑っちゃいます。僕らが生まれる大分前から*1やはりドルオタに人権はなかったらしい。

この小説が世に出たのが昭和55年、丁度2020年から40年前の話になるんですが、そんな時代からオタクの生態は今と変わっていなかったのかと思うとどこか感慨深いです。

物販に並ぶ。ファンクラブでオタク同士繋がってチケット回す。イベント当選するためにハガキ何枚も書く。出待ち入待ちのために朝早くから夜遅くまで現場を彷徨く。アイドルにガチ恋する。
「死ぬなら○○君(アイドル)の迷惑にならないところで死にたい」とか宣ってるシーン見たときは、「Twitterで見たことあるセリフだ!」と思わず叫びそうになりました。

被害者の自宅に同じレコードが二枚あるのを見つけた刑事が「これはおかしい」と言うのは時代を感じてしまいましたが…


意表をつくフーダニット*2
ミステリーを扱ったゲームや漫画はともかく、推理小説なんてものに*3触れるのがウン年ぶりなのもあって程々にワクワクしながら読めた『ぼくらの時代』。

探偵気分を味わうためにミステリー読むことはないんですが、「お前か?お前なんか?」と気づけば勘繰ってしまうのが推理小説の妙というか何というか。普通に外してしまいましたが。

ここまで言うと大分ネタバレになってしまいますけれども、そもそも探偵が誰なのかという所から騙されてしまう人も多いのではないでしょうか。

読めばすぐ分かるように語り口をとにかく意識した作品となっていて、作者と主人公が同姓同名の名前だというのも面白いです。エラリー・クイーンだったり、仁木悦子だったり同じ試みはそれまでにもされていたようですが(トホホ

この語り口に騙されて、女子高生連続殺人事件が予期せぬ方向に転がっていくのはまんまと意表を突かれてしまいます。叙述トリックですね。
あとがきみたいなの読んでたら、叙述や構成の中にトリックを仕掛ける「叙述トリック」という言葉もどうやら80年前後に生まれたっぽい。



""大人""に拒絶されるニュー・ヤングたち

「近頃の若いやつは」

全編通して幾度となく出てくるこの言葉。

「近頃の若いのは何を考えてるか分からない」「近頃の若いやつは感謝を知らない」「おれが若い頃は」

輝かしいヤングの時代だ青春だなんだと大人たちはチヤホヤするが、彼らは若者を真に理解することはできない。向き合わない。
こうあるべきだと自分たちの過去に若者を無理矢理当てはめ、イレギュラーなガキは社会の枠から体よく弾き出す。

そうやって大人たちから拒絶され、寄る辺も行く宛もなくなった若者たちの最後の聖域として""アイドル""がこの小説では扱われてきました。「TV局は現代の神殿」とは巧いこと言ったものです。
まあ今は神の宿る場所はブラウン管ではなく、パソコンやスマートフォンの画面の向こう側になってしまいましたが。

犯人が何故犯行に及んだのか、いわゆるホワイダニットの部分が痛い程共感できてよかったです。まあこれは僕が若者でオタクの社会不適合者だという所が大きい。

時代が移ろっても若者は大人と社会に虐げられるし、どこまで行ってもオタクはガキでピュアなんだなと、改めて思いました。

新装版 ぼくらの時代 (講談社文庫)

新装版 ぼくらの時代 (講談社文庫)

『ぼくらの時代』、推理小説である前に一つの青春小説だと強く感じます。タイトルにもあるように新しい時代、若い世代の肖像を描いたこの作品は、モヤモヤとした青年期を過ごした万人にウケること間違いなし。特にオタク。

是非読んでみてください。


最後に
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

*1:もし40過ぎの方がこの記事を読んでいらっしゃいましたら大変申し訳ありません

*2:誰が犯行を行ったか

*3:そもそも年に何冊も本読むことがない