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【感想】麻生羽呂先生の漫画『今際の国のアリス』が面白い、オタクは『今際の国のアリス』を読め

少年サンデーS、週間少年サンデーで連載していた麻生羽呂先生の今際の国のアリスを読みました。

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5点満点でいうところの100点満点といったところでしょうか。普通に神。

以前読んだ『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』がかなり面白かったので、原作者麻生羽呂先生が描かれたという『今際の国のアリス』も読んでみたんですが、ま~あ面白い。

実写化されるのも大いに納得です。

あらすじ

将来の展望も目標もなく、現実逃避に明け暮れる男子高校生 有栖良平(アリス)。いつものように友人のカルベとチョータと共に深夜徘徊をしていると、アリスたちは巨大な花火を目撃する。気を失った三人は目を醒ますと、荒廃した"東京のような街"に迷い込んでいた。

「ここじゃないどこか」に行くことができたとはしゃぐアリスだったが、次第に不安を募らせる三人。明かりに誘われ神社に立ち入ると、突如「げぇむ」の開始がアナウンスされる。

参加者のシブキから、これが命懸けのゲームであること、「今際の国」と呼ばれる別の世界に連れて来られたことを告げられ困惑するアリスだったが──


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多種多様な「げぇむ」の数々

デスゲーム系の漫画を読むと毎回「よくこんな残酷な遊びをポンポン思いつくな~」と感心してしまうんですが、『今際の国のアリス』も例に漏れずバリエーション豊富で楽しかったです。

体力、体術がモノをいう♠(すぺぇど)、頭脳や知識が有利に働く♢(だいや)、オールラウンドな能力が求められる♣(くらぶ)、人の心を壊す心理タイプの♡(はあと)。不思議の国のアリスになぞらえ*1、トランプの柄で「げぇむ」が分類され、難易度は札の数字によって示されます。

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こんな感じ。

漫画における敵の序列や属性みたいなものにキッズは弱いので、ついついオタクの童心がくすぐられてしまいます。

「ぷれいやぁ」にはクリアした「げぇむ」の数字に応じた日数分の「びざ」が発行され、「びざ」が切れると「今際の国」から強制退去(死)。生き延びるために半ば強制ではあるんですが、あくまでも「自主的に」デスゲームに参加していくところがおもしろいです。この辺は漫画の最後のオチにもうまく繋がっていて見事。

「びじんとうひょう」や「どくぼう」、「すうとり」なんかが好きなんですが、ここの3つは特にルールが練られていると思います。中でも「びじんとうひょう」はラストまでの展開が神懸っていて、キャラの主張や信条、たどり着く答えが、ゲームのルールに基づいて導き出されるという流れが非常に鮮やかでした。何が言いたいのかというと、16巻は神という話です。


キャラのスポットライトの当て方がうまい

主人公であるアリスを中心に当然話は進んでいくんですが、他のキャラクターたちのストーリーラインも同時に進行していくのがこの作品の特徴。

グランドホテル方式というかアンサンブル・キャストというか、呼び方はまあなんでもいいんですが、複数の「ぷれいやぁ」たちのエピソードが次第に交わり、重なる中で、一つの物語が構築されていく様は見ていて気持ちがいいです。

デスゲーム漫画読んでると「どうせこいつらは死なないんだろ」という冷めた目になってしまうことも多い*2んですが、独立したストーリーとして別の話が展開されると、今回は誰が生き残るかわからないという新しい緊張感が生まれていいですよね。終盤までハラハラしながら読めました。


『今際の国のアリス』

キャラクターたちの過去が随所に挿入され、各キャラの人物像が浮き彫りになっていくのも『今際の国のアリス』の見所。

主要メンバー以外の登場人物も掘り下げることで、命に重みを感じさせてくれます。

閉鎖された空間でのサバイバル、頻繁に挟まれるフラッシュバック、ワケありの過去をもつキャラたちの群像劇。作品のテーマなんかも含めて読んでてすごい『LOST』に通ずるところがあるなと思いました。どうでもいいですが。

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人はなぜ生きるのか

漫然と生きてた人間が、死と隣り合わせの環境に放り込まれることで生きる実感を得る。デスゲームものでよくある話なんですが、『今際の国のアリス』ではこのテーマをとことん掘り下げていきます。

本性が剥き出しになる極限状態の中で、人は何のために生きるのか。なぜ生きるのか。命の価値とは。

『ゾン100』読んでても思いますが、麻生羽呂さんは「生きる意味を問う」というテーマにかなり拘っています。

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/03/19
  • メディア: コミック

いつも言ってますが、漫画に限らず説教臭い娯楽作品はぼくはあまり好きではないです。好きではないんですが、『今際の国のアリス』の言葉はしっかり心に届きました。

これは一重に、登場人物たちがどこにでもいる人間として描かれてるからなんだろうなと思います。

生きるための希望もなければ、死ぬほどの絶望もない。自分が何処にいるのかも分からず、退屈な日々をただ浪費する。
そんな人生を送っていたキャラクターたちが、もがき苦しみながら辿り着いた「答え」には、どこか他人事ではない確かな説得力を感じます。

結局、「中身」以上に「誰から」発せられるかによって言葉の重みは変わってくるんだな~と改めて思わされました。

どれだけ残酷な世界で生きることになっても、人の心は美しいんだと、人の命は尊いんだという狂おしいまでの人間讃歌を訴えかけてくる、そんな作品に『今際の国のアリス』はなっています。

ameblo.jp

以下反転で重大なネタバレ

第一話で見た花火が実は花火ではなく大気中で爆発する隕石の光で、『今際の国』は隕石災害で心肺停止に陥った人々が臨死体験の最中に迷いこんだこの世とあの世の境い目の世界だった、というのがこの漫画のオチ。

1巻でのタイトル回収が、最終巻でこういう意味も含んでたんだな~と改めて分かるのはくそ熱かったです。

今際の際に瀕した人間が、絶望の中でそれでも生きたいと願う。三途の川を前にして、人々に生きる意思を問う命の選別こそが「げぇむ」の正体だったというのは作品のテーマと非常に合致したうまい落としどころだったと思います。

最後まで主催者みたいなものの存在がなかったのもよかった。

おわりに

今際の国のアリス』最終巻読み終わってから作者の麻生羽呂さんのブログを読んでみたんですが、この人凄まじいですね。

連載しながらしょっちゅう旅して遊んで結婚して海外留学してブログ書いてってバイタリティやばないですか?

漫画読んでても思いましたが、作者の人生観みたいなものがしっかり確立しているから、こんなにも魅力的な話が描けるんだろうな~と思います。

「自分探しの旅」という言葉が好きではない~という話が特に好き。

ameblo.jp

バトル・ロワイアル』を皮切りに、日本で数多くのデス・ゲーム作品が生み出されてきましたが、『今際の国のアリス』はかなり完成度高い部類に入るんじゃないかと思います。
ここまで清々しい読後感も中々ないですし、オチが本当に秀逸。

「人は何のために生きるか」

この答えのない命題に最後まで真摯に向き合ったのは、天晴れという他ありません。感受性が豊かな今の年齢で出会えて本当によかった。

今年2020年にはNetflix山崎賢人、土屋太鳳のダブル主演で実写化もされるそうなので今から楽しみです。

natalie.mu

www.sunday-webry.com

サンデーうぇぶり他漫画アプリで現在無料で読めるので、皆さん是非読んでみてください。ぼくみたいな社会不適合者の方は特に。

最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

*1:読み終わってから気づいたんですけど、アリスもウサギもチェシャ猫も帽子屋もハートの女王も皆いたんですね。ちょっと感動

*2:その予想を裏切られるのもこの手の作品の醍醐味みたいなところはある